日. 10月 19th, 2025

情報システムの運用方法が大きく変化する中、従来の社内ネットワークに閉じた設計では、多様化・分散化するビジネス環境に十分対応できないケースが増加している。たとえばリモートワークの普及や、さまざまな拠点・端末からの接続機会の増加、そしてビジネスアプリケーションのクラウド化が進行することで、従業員は場所やデバイスを問わず業務を遂行することが一般的となった。そのような状況下で、セキュリティの確保はこれまで以上に重要性を増しており、新しい守りの形を考える必要性が高まっている。従来のネットワークとセキュリティの構成は、本社や主要拠点に通信・管理機器を集中配置し、社外との通信については全て一旦そこに集約させる設計が主流であった。この際、拠点や利用端末から全てのインターネットアクセスを本社経由にすることで、一括でセキュリティ対策を行うことができ、単一の境界でさまざまな脅威から企業資産を守ることができた。

しかしアプリケーションのクラウド化が進むと、拠点や従業員の端末が直接クラウド上のリソースにアクセスする必要性が生じ、通信経路が本社を必ずしも経由しなくなってきた。これにより、従来型の防御壁を前提としたセキュリティモデルは現実に合わなくなりつつある。こうした中で新たな柱となるアプローチとして、ネットワークとセキュリティ機能をクラウド上で統合し、必要なサービスを適材適所で提供する構想が現れている。この仕組みにより、どこからでも安全にクラウドや社内資源にアクセスできる環境が実現される。たとえば、拠点ごと・端末ごとのセキュリティ装置設置や個別管理は不要で、ユーザーがどこにいても高いセキュリティを享受できる。

その利点は、コスト削減や運用負荷の軽減だけでなく、クラウドサービス活用の幅を広げ、ビジネスのスピードと柔軟性を大きく高める点にもある。このような仕組みには複数の要素が統合されている。ネットワークの通信経路を一元管理し、認証や通信の暗号化、コンテンツ制御、不正アクセスの検知・防御など多彩な機能をクラウドを通じ一括して提供できる。管理者は従来のように多数の機器に個別に政策設定を行う必要はなく、クラウド上の中央管理インターフェースから組織全体のポリシーを策定・適用できる。たとえば、従業員ごとに役割やアクセス可能範囲を細かく制御し、不審な挙動があれば即時検出して対処できる。

多様なデバイスや場所からのアクセスが常態化しても、セキュリティ水準を均一に高く保つことが可能になる。この構想の中核であるセキュリティ機能は多岐にわたる。ファイアウォールや侵入検知・防御だけではなく、ウェブアクセスの制御、悪意のあるソフトウェアやサイトのブロック、データ漏えい防止、暗号化といった機能がシームレスに統合される。また、社外からのアクセス管理やゼロトラストと呼ばれる「全てのアクセスは信用しない」前提の強固な認証モデルも組み込まれている。これにより、管理者やユーザーが意識しなくても、常に適切なセキュリティレベルが自動的かつ柔軟に適用される。

さらに、クラウド形式で提供されることで利便性が損なわれることはなく、むしろ可用性や拡張性が向上する点も見逃せない。事業規模や拠点数、ユーザー数の増減に応じて、機能や容量を必要に応じて迅速に増減でき、利用者の急増や突発的な業務需要にも即座に対応できる。物理的な機器増設やソフトウェアの個別導入といった手間が不要なため、ビジネス成長の足かせになることがない。一方で、このような新しい仕組みの活用には適切なポリシー策定と運用ルールの設計も欠かせない。単に技術だけを導入するのではなく、組織の業務実態とリスク特性を把握し、誰が、何に、どのような権限でアクセスできるかを明確に定義する必要がある。

また時流のセキュリティ脅威に応じて、常に最新の対策を取り入れる柔軟性や俊敏性が求められる。経営・情報システム部門にとって、クラウド活用の安全性確保は大きな課題でありながら、その成否は単独の製品や技術だけに依存するものではない。新しいネットワークとセキュリティのアーキテクチャの導入を検討する際は、既存環境との整合や、従業員の使い勝手、全社規模のガバナンス制度との連動も踏まえなければならない。通信や認証、監査やインシデント対応といった5段階の機能が統合され、日々加速するクラウド活用の安全性を根本から支えると同時に、組織固有の運用文化・事業内容に合致した最適設計が重要になる。多様化する働き方・環境の中で、組織全体の情報資産を守り、かつ業務の効率化や競争力強化を同時に叶えるためには、ネットワークとセキュリティを一体化させた柔軟かつ強固なアプローチが鍵となる。

これからのセキュリティ基盤を根底から変える新しい概念は、企業活動を守る大切な柱となりつつある。